オンライン・アイデンティティのクリエーター 中川友里さん


8. “ストリート”から“世界”へ

近年は、日本のポップカルチャーの輸出促進が、「クールジャパン」など政府を中心にも進んでいるが、ファッションブロガーたちはすでに個人で、日本のストリートファッションを世界に広めている。

彼女はファッションの中に日本の伝統的要素を取り入れることに意欲的である。

「小さい頃から母の影響でお茶やお花をならっていたからかもしれません。京都での大学時代も、神社仏閣を巡るサークルにも入っていました。とくに日本の伝統的な柄や色彩が好きです。」

ただ伝統を守るだけでなく、刷新することが大事だと考えている。

「昨年のプラダの春夏コレクションで、日本の和柄を取り入れた草履やサンダルが発表されたように、ヨーロッパの人から見た日本のイメージが、新しいファッションに取り入れられることは増えています。デザイナーだけでなく、ネットでストリートスナップなどを見ていると、ヨーロッパの人が日本の羽織とかをジャケットがわりにぱっと羽織っているようなこともあって、それがすごくかっこよかったりします。日本人は着物はこうやって着なくてはいけないというような固定概念があるけれど、それを一度崩して、ファッションに取り入れれば、世界の人を惹きつける力を持っていると思っています。」

彼女がとくに日本の伝統的な柄や色彩を意識し、セルフディレクションした写真でも、和服を独自に着付けたものがある。和柄のタイツと、手作りの小物をアレンジし、新宿のネオン街で撮影したものである。ネットで公開し、海外から反響の大きかった写真の一つである。

 

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彼女はネットで発信する情報を、海外の人に届けたいと望んでいる。

「google+やinstagramは海外の人も見るので、そこではとくに写真を中心に、英語を添えて発信してます。英語といってもキーワードを書くくらいなのですが。」

彼女のgoogle+と instagramのページは下記である。
google+ → https://plus.google.com/114465707875695397828/posts
Instagram → http://instagram.com/darayunya

彼女のみならず、ファッションブロガーの間では、instagramを使い、写真を中心にして、英単語を添え、一日に何度も投稿する。その成果あって、多様な言語でコメントが集まり、広く世界の人が見ていることがわかる。

あまり取りざたされないが、東京のストリートファッションの要素がパリコレで発表されるデザインに取り入れられることもあると言う。彼女たちにとってはそれを「してやったり」と見ることが、一つの目標であるように思う。

ゆっくり慎重に行われる文化政策の一方で、ファッションブロガーたちは個人で速いスピードで文化交流を行っている。


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