オンライン・アイデンティティのクリエーター 中川友里さん


7. “バーチャル”から“リアル”へ

彼女はネット上で活躍の幅を広げてきたが、今、リアル世界へも拡張が進んでいる。

2013年12月、セルフディレクションで撮影した写真を展示する写真展を、渋谷の109で開催した。これまでネットでのみ公開していた作品を、ついにリアルの場で公開した。
 

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「ちょうど何人かの方から、もっと写真を人に見せたらと勧められたのもあって、10月末頃Twitterで『写真展やりたいんですが、 お店とかギャラリーとか協力してくれませんか』とつぶやいてみたんです。そうしたらすぐに、ファッションブランドの方が声をかけてくださって、3日後に打ち合わせ、1週間後に写真を仕上げて、1ヶ月後に開催と、トントン拍子に話が進みました。」

展覧会の名前は『NEXT STAGE -photographer collaboration program(2013年までのアーカイブと来たる2014年にむけて歩み出すNEXT STAGE)』。2013年12月14日から25日の間、LDS 渋谷109店の店内で開催された。

「若者たちのパワーが最も集まる、ある意味でのパワースポットで開催できるというのは、すばらしい機会でした。私も私のブロガーの仲間たちも普段は足を運ばない場所ですが、そういう人たちが109の文化と接するきっかけにもなったらいいなと思いました。作品は、109の若いお客さんに合わせて明るい色の写真を選びました。」

さらに彼女のリアルな活動は拡大を続けている。2014年は、自らアクセサリーのデザインをし、販売を始めた。「#OOTD」というSNSで自らのコーディネートを発信する時に添えられるハッシュタグを立体化した、アクリル製の、大きなイヤリングである。

 

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「アクセサリーを作りたいと思い始めて、コラボレーションしてくれるという企業もあったのですが、自分の責任で、自分で利益を得て、売上の10%をユニセフに寄付することがしたかったので、全部自分でやることにしました。そうしたら、工場とのご縁を作ってくださる協力者にも恵まれました。最小ロットがちゃんとさばけるか不安だったけど、なんとかなるかと思い切って、資金は全部自分で出しました。ただ、デザインを工場に伝えるためのデータも、自分で作りたかったのにできなくて、今後のために、今、Adobe illustratorを必死に勉強中です。」

その後、彼女は、ハッシュタグイヤリングの第二弾も発売した。

「洋服を作らないかと言っていただいたりもしますが、作るのは個人でできるものがいいと思っているので、アクセサリーはいいなと思っています。自分で作っているときのワクワクが楽しいから、それはじゃまされないようにしたいんです。でも発信するときは、たくさんの人を巻き込みます。みんなに『見てください』と一生懸命言っています。」

彼女のリアルな活動も、プロモーションは彼女らしくインターネット中心に行われる。

「今は、ブログやSNSで『欲しい方は私にメールをください』と声かけているようなやり方です。ECサイトを作ってもいいのですが、今は、欲しいと言ってくださる方と直接会って、おしゃべりしながら、渡すのが楽しくて。」
               
ネットのコミュニケーションをフル活用しながら、リアルなコミュニケーションも大切にしている。

彼女のみならず、ファッションブロガーたちが、リアルなもののデザインを手がけることが増えている。彼女たちは、インターネット上の情報発信力を活かして、生産活動を行っている。今後、3Dプリンタなどの普及により、一般個人が立体物を生産することが、どんどんと容易になっていく。しかし個人で生産しても、プロモーションできなければビジネスにはならない。そういう中で、彼女たちがまずはリーダーとなるのだろう。


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