オンライン・アイデンティティのクリエーター 中川友里さん


5. 個性で勝負する時代

従来のマスメディアの時代からインターネットの時代になり、価値基準に変化がおきている。

彼女はモデルの活動をするが、大企業のスポンサーのもと、多くの人々の支援を受けて、テレビや雑誌に頻繁に登場するようなモデルとは違う。インターネットを使って、小規模に、それを活かした仕事をしている。

「本当にきれいなモデルさんなどを見ると、それは憧れます。でも生まれ持った体は変えられないし、足の骨をぽきっと折って、継ぎ足して、伸ばしたりできないから、私は“個性”で勝負するんです。私は足が短いし、本当はコンプレックスの塊です。だから違う生き物になりたくて、コスプレをしたり、いろんなファッションをするんです。でも今、ちょうどうまいことに“個性の時代”が来ていると思います。」

彼女は、一般的にはとても足が長いが、彼女なりの理想があるようだ。彼女は、普遍的な“美しさ”で勝負するモデルではなく、、”個性”で勝負するモデルのようだ。“美しさ”は人が先天的に備えるものであるのに対し、「個性」は後天的に創造することができるコスプレのようなものだというのが彼女の考えだ。

「8割の人が私のことを嫌いと言っても、2割の人が好きと言ってくれるなら良いと思っています。万人受けして自分らしさを失うより、受け入れてくれるのは一部の人でもいいから、自分らしさを保ちたい。」

彼女は個性を守るために、あえて広いマーケットを対象にはしない。

「雑誌でも、例えばストリート編集室のスナップ誌は、広告も入れず、本当に自分の好きなファッションをしている人だけを出してくれる雑誌です。」

yuri-nakagawa-photo-08

 

しかし基本的には、テレビや雑誌は広告収入によって成り立っているメディアであり、そこでの情報発信は広いマーケットを対象にする必要がある。だから彼女は、インターネットという舞台を拠点に選んでいる。インターネットは能動的なメディアであり、興味のない人は見ないが、本当に興味のある人は見るから、彼女の目的に合っている。

また、彼女は基本的に、自分でマネージメントを行っている。東京に来てからは所属している事務所があるというが、大学4年生の頃はそれもなかった。

「私の仕事は、ダンスとか演技のトレーニングをするようなものではないので、誰のサポートもいらないんです。ポージングは独学です。誰もやっていないような、まるで人間でないようなポーズをして、見た人に“癖のある子だな”と思ってもらえるように、一人で追求してきました。」

個性を表現するために、標準的なトレーニングは必要ない。

 

yuri-nakagawa-photo-16

 

今、彼女は、次ページで詳しく伝えるように、自らデザイン、販売したり、活動の幅を広げている。将来はどのような計画なのだろうか。

「ずっと以前から、いつかバイヤーのお仕事をしたいと思ってきました。でもお店は持ちたくないです。空間を借りて、人を雇って、切り盛りするようになると、3年くらいで終わってしまいそう。フリーとして企業と契約させていただくとか、ネットショップならやりたいです。そのためにも今は、中川友里というジャンル確立させて、それを支援してくれる人やファンに出会って、WEBサイトに人が集まってくれることを目指し、頑張ります。」

お店を持ち、人を雇うことになれば、多くの人の需要に応えないといけないことも起こるだろう。個性を守るためには経営の規模は拡大しない。だからインターネットを使って、従来なら人が必要だった作業を自動化することには積極的である。

インターネットは”個性”で勝負するビジネスに有効である。そして今、多くの人が、企業の一部としてではなく、”個性”で勝負することに興味を持っている。それが彼女の言う「個性の時代」だろう。


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

page top