【講演】次世代画像入力・ビジョンシステム部会見学会 2014年9月22日


次世代画像入力・ビジョンシステム部会とは、社団法人日本工業技術振興協会のR&D事業の一環であり、画像技術に関わる企業によって構成されています。CCDカメラが普及し始めた昭和62年に設立、会員企業の画像技術の高度化、周辺技術との複合化を目的に、27年もの間、隔月で、会員企業の画像技術者による定例会が開催され続けているそうです。(参考:http://www.jttas.or.jp/html/pdf/z240309.pdf)その第156回目、部会長である東京大学大学院情報理工学系研究科相澤清晴教授より、プリントシール機メーカーのフリュー株式会社(以下、フリュー)で見学会が発案されました。フリューの皆様にご快諾いただき、2014年9月22日実施されました。
第1部は、参加者によるフリューのプリントシール機の体験会、第2部は、プリントシール機に関する講演会が行われました。

プリントシール機体験会

 

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体験会の会場は、フリュー渋谷本社1階のプレスルーム。そこには、フリューのプリントシール機、最新の6機種が並んでいました。フリューでは、1年に3種類の新機種が発売されますが(その他、バージョンアップ商品が6機種発売されます)、2013年3月発売の『BEAUTY ADDICT』から、2014年11月発売予定の『FASHIONisM』までの6台が、プレスルームにありました。

参加した画像技術者の方々のほとんどが男性。普段はプリントシール機を利用することのない方々でした。プリントシール機を自分好みに利用するには、いくつもの選択画面があり、それぞれに時間制限があって、慣れていないと難しいのですが、フリューの方々が、手助けをしてくれました。しかし、さすが画像技術者の方々は比較的すぐに慣れているようでした。画像を自身のスマートフォンにダウンロードし、楽しんでいるようでした。

参加者の中にはわずかですが、女性技術者の方々もいました。プリントシール機を利用するのは「久しぶり」ということでしたが、最近の機械の進化に驚き、「やっぱり楽しいですね」と話していました。プリントシール機は、光学処理とデジタル画像処理を組み合わせ、実際よりも理想的な姿になった画像を出力してくれます。彼女たちは、6機種をほとんど利用して、各機種の特徴の違いを楽しんでいました。また、フリューのプリントシール機では、一部の機種で『証明プリ』という証明写真を撮影できるコースがあり、標準のコースと比べて加工の少ない仕上がりになります。彼女たちはそれも気に入っているようでした。

プリントシール機の利用体験の後はセミナー室へと移動し、相澤清晴先生による司会進行で講演会が始まりました。
 

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講演(1) プリントシール機と「ガールズトレンド」 フリュー GIRLS’TREND研究所所長 稲垣涼子氏

講演会、最初の登壇者はフリュー内GIRLS’TREND研究所所長の稲垣涼子さん。彼女は元々『姫と小悪魔』『美人プレミアム』『Lumi』など、当時の女子高生ならば知らない人のいない、大ヒットしたプリントシール機の企画者です。現在は全ての企画者を率いると共に、GIRLS’TREND研究所の所長をしています。

まずは、1995年より始まるプリントシール機の歴史のお話がありました。その中で、とくに2000年代後半より人気商品を生産しているのがフリューで、現在は67%以上のシェアがあるということです。フリューのサービスへの登録者数(今では、ユーザはプリントシール機で作った画像をスマートフォンにダウンロードして楽しむため、プリントシール機メーカーが提供するサービスの会員登録をします)は800万人以上ということで、年齢別に見ると、女子高生の9割、女子大生の7割が登録しているという数値になるそうです。それを活かし、ユーザ層の女の子のトレンドを理解してビジネスに活かすための研究機関も設置され、それがGIRLS’TREND研究所ということです。

 

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講演(2) 「写り」をつくる画像技術 フリュー 業務用ゲーム事業部開発部 小林潤一氏

2番目の登壇者は、プリントシール機の画像技術開発を担当する小林潤一さん。現在のプリントシール機は、ユーザが自分だと思える範囲で、誰もが理想とする姿の画像を提供してくれますが、それがどのような技術によって成り立っているかについて、お話がありました。

例えば、最新の機種『R』では、目の形を「たれ目」「まる目」「ねこ目」という3種類から選ぶことができ、自分らしさを失わず、理想の目をした顔画像を手に入れること、”顔”だけでなく理想的な”全身”撮影をすることなど、それらがなぜ実現できているのか、コンピュータによる画像処理の技術と、それを支えるカメラやレンズや照明の技術のお話がありました。

 

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講演(3) シンデレラ・テクノロジー 東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員 久保友香

3番目の登壇者は私、久保友香です。私は、プリントシール機を含む、「元の姿から変身し、新しいアイデンティティを形成する技術」を「シンデレラ・テクノロジー」と名づけています。

プリントシール機の「誰もが理想的に変身できる」技術は、世界に類を見ない発展をしていますが、日本には古くから、不特定多数から見られる仕事の女性が、化粧や衣装で変身をしてきた歴史があり、プリントシール機はそういう日本の文化に根付いたものであると考えられること、またこのような日本の変身の技術は、今後さらにネット世界で一般個人の情報が無防備にさらされていく中で、普遍的に求められる可能性もあることを、お話しました。

 

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おわりに

見学会の参加者の多くが、日本が誇るデジタルカメラの技術開発に携わる方々でした。写真とは「真実を写すもの」と誰もが考えますが、デジタルカメラの技術開発者の方は、「何を真実と感じるかには個人差がある」と言いました。「真実に近づけても”真実でない”と言う人もいるし、真実を求めていない場合もある」と言いました。
今回、フリューのプリントシール機は、女の子の理想を実現するために画像技術の開発がなされ、その結果、多くの女の子を惹きつけていることがわかりました。それは、プリントシール機の開発者の方々が、女の子たちが「どんな真実を求め、どんな真実を求めていないか」を見極めているからではないかと考えました。


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