世界に日本の「プリクラ文化」を伝えるブロガー サマンサさん


■ 「プリクラブロガー」から「デザイナー」へ

 彼女のプリクラブログの中には、「what is purikura?(プリクラとは何か?)」というページがあります。そこには、海外の人に「プリクラ」をシンプルに伝えるためのキーワードが10個以上並べられています。上から順に、「クリエイティビティ」、「フォトダイアリー」、「セルフポートレート」、「生活の一コマ」、「ポップカルチャー」など書かれていますが、彼女と話を進めるにつれ、彼女にとって最も重要なのは一番目の「クリティビティ」ではないかと感じるようになりました。彼女がプリクラに熱中する背景には、クリエイティビティを発揮する上での壮大な目標があるようです。

「大学では、“映画とテレビ”の専攻で、自分で監督をして映画も作っていました。小さい頃から、例えば、小学校でピラミッドに関する自由研究などあった時も、装飾をして、きちんと製本して、こだわって作り上げていくタイプでした。四角い枠の中で、より良く見せるために、位置や色を構成するようなことが、私はすごく好きな気がします。本当はデザイナーになりたかったんです。」

 彼女のプリクラ写真を一つ一つ見せてもらううちに、デザイナーとしての彼女の世界観が見えてきました。テーブルに広げたプリクラ写真の中で、ただ一つだけ、彼女が1人で写っているものがありました。

「今、ダンスを習っているのですが、その発表会の前、一緒に撮る友人がいなかったから、一人で撮ったプリクラです」

 そのプリクラ写真は、全体が黒と白と赤で統一されています。衣装は黒と白、そこに真っ赤な口紅をつけ、らくがきでも挿し色に赤が使われています。

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一人で撮ったプリクラ写真

 私が彼女に会ったちょうどその日、彼女は週末に通っているネイルアートのレッスンの帰りということで、ネイルアートの作品も見せてもらうことができました。一番気に入っているという作品は、やはり、黒と白をベースに、赤が挿し色になっていました。それが彼女の好きな色のトーンなのだとわかってきました。

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サマンサさんのネイルアート作品

 私は、彼女は、本当は、プリクラを一人で使いたいのではないだろうかと考えました。なぜなら、人と一緒に使うと、らくがきの文字やイラストの色は一存で決められないし、相手がどんな色の服を着てくるかもわかりません。しかし彼女は「それは違う」と答えました。

「確かに、私の友人で、もともとカメラマンを目指していたアメリカ人の女性がいるのですが、彼女もプリクラが大好きなのですが、自分の世界観が崩されないように、プリクラは一人で使いたいと言っています。でも私は、やっぱり友人と使うから楽しいと思っています。以前、ゲームセンターで偶然出会った知らない大学生2人に誘われて、一緒に撮ったことがあるのですが、そういう偶然性も楽しいと思っています。」

「いくら世界で暗いことがあっても、ほんの小さな部分にでも、きれいなものがあると、楽しい気分になれるものです。私はそういうものを作るデザイナーになりたいと思っています。プリクラもネイルアートもそういうもので、日本にはそういう独特な文化があると思います。私は日本に10年住んで、日本人の感覚と、イギリス人の感覚の両方を持つようになってきました。それが自分のユニークなところだと思っています。いずれはイギリスに帰って、それを活かしたデザイン活動をしていきたいと考えたりしています。」


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