世界に日本の「プリクラ文化」を伝えるブロガー サマンサさん
■ よくプリセットされたデザインツール
彼女は、話をしたカフェのテーブルの上に、今年1月から撮ったプリクラ写真のシールを全部並べてくれました。
サマンサさんのプリクラ写真
その中で、私は彼女が友人と和服姿で写っているシールに目をひかれ、手にとると、彼女はそれについて話してくれました。
「最初、和服でも、背景は意外とビビッドな色が合うかと思ったのですが、合わなくて。それで背景を淡い色に、ペンはソフトな質感のものにしました。」
和服姿のプリクラ写真
彼女が話してくれたのは、プリクラでユーザが写真を撮影した後、組み合わせることができる「背景」や「らくがき」の機能についてのことです。「”美しくなる”ことだけを目的に、プリクラを使うのはよくない」と主張する彼女にとって、画像処理よりも重要なのが、この「背景」や「らくがき」を組み合わせる機能のようです。最新機種では、「背景」は無地や柄のあるものなど30種類くらいのセットがある。「らくがき」というのは、ペンを使って文字やイラストを合成することで、ペンの種類は、様々な風合いのものが18種類くらい、それぞれ色が20種類くらい、太さは3種類くらいあります。
「かわいくデザインするためには、洋服の色に合わせて、背景やペンの色を選ぶのがポイントです。一番難しいのは、ペンの種類を選ぶこと。細いペンはかわいくなくて、少し太いペンがかわいい。」
彼女はプリクラでデザインすることを楽しんでいます。プリクラという機械は、見方を変えれば確かに、デザインツールでもあります。デザインツールとしてのプリクラには、他のデザインツールにはない特徴があります。例えば、多くのプリセットされている素材があって、デザインを簡単にしていることがあります。
「らくがき」の最も原始的な方法は、「ペン」機能で自由に描くことです。しかし、既にペンで描かれた文字やイラストを選んで合成するだけの「スタンプ」という機能もあります。プリクラユーザの間では、例えば活字のような機械的ならくがきは「かわいくない」とされ、手描きが「かわいい」とされているので、「スタンプ」も手描き風です。「スタンプ」の中には、ユーザがキーボード入力した名前や日付を手描き風に変えて、合成する機能もあります。さらに複数のスタンプがセットになって、それ一つで画面全体を装飾できる「一発落書き」という機能もあります。ユーザが選んだ背景に合わせて、スタンプを勧めてくれる「背景にぴったり」という機能もあります。
このようにプリセットされた素材が多くあることは、プリクラの特殊な利用環境において有効です。プリクラは全国各地のゲームセンターに設置され、多くのユーザはデザインの能力など持っていません。また、プリクラを利用するには時間制限があります。プリクラメーカーはかつてから、ユーザが「らくがき」に使える時間を保ちながら、回転率を高めるために、様々な工夫を行ってきました。その結果、今では1つの「撮影ブース」に対して、2つの「らくがきブース」を組み合わせ、後の2組の客が撮影している間、「らくがき」をできるシステムが標準となっています。さらに後の客がいない場合には、時間を延長できるサービスもあります。それでも時間は限られており、短時間で撮影した6枚全てのデザインを、デザイン能力のない人が行うために、多くのプリセットされた素材が有効に使われています。
サマンサさんは、このプリクラのデザインの機能が、世界から求められていると言います。
「海外でもフォトブースというのはあちこちにあります。基本的には証明写真を作るための機械ですが、最近、目的が変わってきています。中に小道具を持ち込むような人も増えているし、結婚式やパーティーの会場に設置されることもあります。そこで、プリクラのようにらくがきができたら、喜ばれると思います。日本のプリクラのらくがきは、世界にも広がりそうな気がする。」