女子高生を惹きつけるプリクラの技術経営 ~第3回先導的ユーザとのネットワーク


 1995年に誕生し、17年以上もの間、その時々の女子高生から支持され続けてきたプリクラ機。プリクラ機の中核にあるのは、ユーザの理想とするイメージを作る「技術」。プリクラメーカーはどのようにして、女子高生の理想を「技術」に変えてきたのか?プリクラメーカーでトップシェアを持つフリュー株式会社への取材から明らかになったことを中心に、全4回にわたってお送りしている。

 


 

第3回は、フリューで行われるグループインタビューや、アミューズメントマシン業界展示会を取材し、わかったことを紹介する。フリューとプリクラユーザとの関係に注目をした。

 


 

■ ディープなグループインタビュー

第2回で紹介したようにフリューでは、初期は、プリクラの開発を全て男性技術者のみで行っていたが、2005年~2006年頃から、女性が企画者として開発をリードするようになっていった。フリューでは、かつてから週に1回以上の頻度で、女子高生を集めたグループインタビューを行っていた。しかし、女性が開発をリードするようになって、グループインタビューの意味が大きく変化していったと、プリクラ部門を統括する新本氏は言う。

「男性が企画を行っていた時のグルインは、女子高生の言葉を、そのまま技術に翻訳するような作業だった。しかし女性が企画するようになって、女子高生の意見や評価は聞くけれど、それはあくまで確認作業であって、結局、企画者が自分の考えで作るようになった。」

グループインタビューの様子を、実際に見せてもらった。そこには、驚く光景があった。グループインタビューに集まるのは、平均的な女子高生達かと予想していた。なぜなら、フリューのプリクラ機は全国の隅々まであるゲームセンターに設置され、その全ての女性を知るための、マーケット調査をするのだと思っていたからだ。しかし、そこに集まっていたのは、平均的とは言い難い女子高生達だった。

グループインタビューの内容は、開発段階の機械と、既存の機械と比較するというもの。フリューの企画者が近よってたずねると、彼女達は、新しいプリクラが印刷した写真をじっと見つめながら、「眉の濃さは、前の○○だと普通に化粧すると消えてしまうくらいだったけれど、今回のは消えなくて良い」「前の△△は、つけまつげの向きがはっきり見えなかったけれど、今回のは見えるから良い」と次々と評価をしていった。そして企画者と女子高生との話題は、私もついていかれないほど、細部の評価へと続いていった。

彼女達はプリクラの画像処理を知り尽くしている。画像処理に不足があれば、自分の化粧で補完する方法も知っている。まるで画像処理のプログラムまで理解している「プリクラハッカー」だ。彼女達は、フリューの企画者が離れている間は、ずっと手鏡に向かっている。鏡を見て、前髪をなおし、化粧をなおし続ける。自分の見え方に、特別に意識が高い人達のようである。

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